電車の遅延により社員が遅刻した場合、遅延証明を提出すれば不問としていますが、就業規則に定めたうえで、給料から差し引くこともできると聞きました。(1)そのような規則をつくるに当たり、注意することはありますか。また、いつも始業直前に出勤している社員の場合、余裕をみて出社していれば業務への影響は最小になると考えますが、(2)そのようなことを社員に要求することはできるのでしょうか。
(1)規則をつくるときの注意点
遅刻、早退等の場合は、ノーワーク・ノーペイの原則により不就労分は賃金から控除出来ます。不就労分以上を賃金から控除する場合は、懲戒処分として行う事が可能です。ただし、減給額は労働基準法の定める範囲内である事、二重処罰の禁止等、制裁に関する規則を受けます。減給の制裁とは、労働基準法91条の「減給は、1 回の額が平均賃金の1 日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の10 分の1 を超えてはならない」と定められています。よって、差額の賃金カットについては、この減給の制裁で許される範囲内にとどめなければならず、実際の控除額が、減給制裁の許す額に収まっているか、随時確認が必要です。また、懲戒処分は、就業規則の根拠規定に基づかなければならず、同一事案に対し2回懲戒処分を行う事は許されませんので、減給の制裁として賃金カットを行っている場合は、遅刻が度重なった場合でも、これ以上懲戒処分を行う事は出来ません。
(2)従業員に要求した場合
始業前に余裕を持って出社するように要求した場合については、会社の明示又は黙示の指示があるか、業務を行う為の通常必要とされるものかから労働時間であるか判断されます。
会社が個別に指示したり、就業規則やマニュアル等により、会社の指揮監督下で一定の作業準備する事等が明確に義務付けられている場合には、会社の指揮命令下の労働となり労働時間となります。明示の命令がなくても、業務準備を行わない事について、事実上不利益な扱いがされたり、就業規則で不利益が定められている場合は、黙示の命令があったと解され、労働時間になります。ただし、業務準備を始業時刻後に行ってもよいとされている場合に、従業員が自主的に始業時刻前に行っている時は、労働時間になりません。
また、その業務を行うのに通常付帯して必要とされる業務準備時間は、指揮命令下にあり、かつ作業に 必要とされる労働なので、労働時間として取り扱われます。
社会保険労務士事務所 はじめ 早元 勇 先生
〈専門〉助成金申請、障害年金、労務相談
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社会保険労務士の早元勇です。
皆様のお役に立てれば幸いです。
掲載日: 2017/4/ 5 (更新: 2018/7/ 4 )